
2025年11月、ドイツ・ザールラント大学のベッカー教授が率いる量子光学グループより、博士課程学生のデービッドさんを本研究室に迎えました。
本滞在は、ASPIRE プロジェクト「DIAMONDQTECH」の一環として実施されたものです。
約3週間の滞在期間中、デービッドさんはダイヤモンドを用いた量子技術に関する研究に参加するとともに、日本での研究生活を体験しました。今回は、滞在を通して感じたことや得られた経験について、お話を伺いました。
デービッドさんへのインタビュー
Q1:ご自身の研究背景について簡単に教えてください。
私はデービッド・リンドラー (David Lindler) といい、現在ドイツ・ザールブリュッケンにある クリストフ・ベッカー(Christoph Becher) 教授の実験物理学グループで博士課程3年目として研究を行っています。
主な研究テーマは、量子通信ネットワークへの応用を目的とした非線形光学、特に量子周波数変換です。
具体的には、光学セットアップの設計・構築・アライメント、ザールブリュッケン市内に敷設された光ファイバーを用いた単一光子実験の計画と実施、取得したデータの解析、そして実験結果を説明するための理論モデルの構築などに取り組んでいます。
Q2:今回の滞在での目標は何でしたか?
日本での滞在期間は比較的短かったため、主な目的は研究アイデアの交換や、互いに異なる研究アプローチについて議論することでした。
また、今後の共同研究につながるような人とのつながりを築き、協力関係を深めたいとも考えていました。
Q3:ドイツでの研究の進め方と比べて、驚いたことや違いはありましたか?
学部生や修士課程の学生が研究の多くを担っている点には、とても驚きました。ドイツでは、研究の中心は博士課程学生が担うことが多いからです。
学部生のうちから実際の研究に深く関わり、研究者としての姿勢を学べるのは、とても素晴らしいことだと思います。
また、ドイツと比べて、一人あたりに使える研究設備が非常に充実していると感じました。
Q4:日本の学生や研究者と一緒に研究してみて、いかがでしたか?
皆さんとても親切で、研究の話だけでなく、さまざまな話題について気軽に話しかけてくれました。
質問をしたり、アイデアを議論したりすることに対しても、とても話しやすい雰囲気でした。
学生の皆さんが研究を進めるうえで高い組織力を持っていることや、グループ内での密な協力体制にも感心しました。
お互いに学び合いながら、モチベーションを保ちやすい環境だと感じました。
Q5:研究室外で印象に残っている場所や体験はありますか?
週末に京都を訪れました。とても混雑していましたが、歴史ある寺社を巡る体験はとても印象深かったです。特に清水寺周辺の紅葉は本当に美しかったですね。
もう一つのハイライトは江の島です。趣のある坂道や、海を一望できる景色がとても魅力的でした。
Q6:今後 ASPIRE に参加する学生や、留学を考えている学生へのメッセージをお願いします。
交換プログラムに参加する機会があれば、ぜひ挑戦してほしいと思います。
異なる文化や研究環境を経験することで、自分自身の視野が大きく広がり、これまで当たり前だと思っていた研究や生活を見直すきっかけにもなります。
個人としても、学術的にも大きな成長につながる貴重な機会ですし、純粋にとても楽しい経験でもあります。
ASPIRE プロジェクト「DIAMONDQTECH」は、量子技術の発展を目指すとともに、日独間の研究交流と長期的な国際連携の構築を目的とした取り組みです。
デービッドさんの今回の滞在が、今後の研究キャリアに新たな視点をもたらすとともに、ASPIRE のような国際交流を通じて多くの学生が国境を越えて研究交流を行うきっかけとなることを期待しています。
本交流を支援してくださった ASPIRE プログラム、JST、DFG に心より感謝申し上げます。今後も学生・研究者間の活発な国際連携を推進してまいります。
※本記事は、英語での回答をもとに日本語訳を作成しています。原文(英語)も併せて掲載しています。