小坂研究室

研究内容

研究室研究内容紹介 小坂英男 2025年12月

量子コンピュータと量子通信は、一見すると別々に発展してきた技術のように見えますが、将来の情報社会を支える基盤技術としては密接に関係しています。
近年では特に、量子コンピュータ同士を量子的に接続し、分散的に計算を行うという視点が重要になりつつあります。 

量子コンピュータは、従来の計算機では現実的な時間内に解けなかった問題を高速に処理できる可能性を持つ一方で、計算途中で生じる誤りをいかに抑え、誤り耐性を持った計算をスケールさせるかが大きな課題となっています。
一方、量子通信は量子力学の原理に基づき、盗聴を原理的に検知できる高い安全性を備えた通信を実現します。

そして近年注目されているのが、これらを単に「通信」と「計算」として分けるのではなく、量子的に接続し、ネットワーク全体として計算・情報処理を行うという発想です。
この枠組みでは、遠く離れた量子ノード同士が量子状態(特にエンタングルメント)を共有し、分散量子計算や秘匿計算といった、従来のネットワークでは難しい情報処理が可能になると期待されています。

小坂研究室では、このような背景のもと、量子インターフェース、量子コンピュータ、長距離量子中継を主要な要素として捉え、それらを支える基盤技術である 量子メモリ量子操作(制御・読み出し) を研究しています。さらに、その延長として 量子センサ への展開にも取り組んでいます。

メイン

量子通信と量子コンピュータをつなぐ:量子インターフェース

量子情報を分散的に扱うためには、光子で運ばれてくる量子情報を量子ノード内部の量子状態へ写し替えたり、逆にノード内部の量子状態を光へ戻したりする 量子インターフェース が重要になります。
特に近年では、量子インターフェースは「通信のための変換器」にとどまらず、分散量子計算を成立させるための中核技術として注目されています。

将来の量子計算機の有力候補である 超伝導量子ビット(マイクロ波領域) と、長距離伝送に適した 光(光通信) の間には、周波数・物理機構の両面で大きな隔たりがあります。
この隔たりを越えて、量子情報を損なわずに受け渡しする 量子トランスデューサ の実現は、分散量子計算や誤り耐性量子計算をネットワーク化するうえで不可欠な課題です。

量子コンピュータ:分散・誤り耐性を見据えた計算プラットフォーム

量子コンピュータは、単体で高性能化するだけでなく、ネットワークでつながって機能する計算ノードとしての役割が重要になりつつあります。
実用的な量子計算を実現するためには、計算途中で生じる誤りに強い仕組み(誤り耐性)、高い制御精度、そして拡張性が不可欠です。

小坂研究室では、将来の分散量子計算を見据え、超伝導量子コンピュータ方式を含む量子計算プラットフォームに注目し、量子計算機がネットワークの一部として動作する際に必要となるインターフェース、量子メモリ、制御を一体の問題として扱います。

特に、超伝導(マイクロ波)と光(通信)を結びつける技術は、分散量子計算・誤り耐性の観点からも重要であり、計算と通信を真に統合するための挑戦的課題として位置づけられます。

物理系としての強み:ダイヤモンド中の量子(色中心、NV中心)

量子インターフェースや分散量子計算を具体的に実装するためには、量子状態を比較的長く保てること、光と結びつけて扱えること、精密に制御・読み出しできることが求められます。

小坂研究室では、超伝導量子ビットと並ぶ重要な物理系として、ダイヤモンド中の量子(色中心)、特に 窒素空孔(NV)中心 を活用した研究を行っています。
NV中心は、優れた量子メモリ特性と光との親和性を併せ持ち、分散量子計算における量子ノードとして有望な物理系です。

NV中心を“万能材料”として扱うのではなく、量子インターフェース、量子メモリ、ノード内操作といった機能を実現するための物理系として位置づけ、方式設計と要素技術を往復しながら研究を進めています。

量子センサー

量子中継:量子通信を支える量子ノード技術

量子通信を長距離に拡張するためには、量子状態を長時間保持し、自在に光子と量子もつれを生成できる 量子メモリ が鍵となります。さらに、実環境におけるノイズや制御誤差の中でも量子状態を確実に扱うためには、誤り耐性を意識した量子操作(制御・読み出し) が不可欠です。

量子通信の代表的な応用である量子暗号通信は高い安全性を持つ一方で、光ファイバー損失による通信距離の制限があります。この制約を克服するために必要となるのが 量子中継器 です。

小坂研究室では、量子メモリと量子操作を中核とした研究を基盤として、まず ダイヤモンド中の量子(色中心)を用いた量子中継 の要素技術を段階的に積み上げています。
さらにその延長として、量子インターフェースや超伝導量子ビットに関する研究動向も踏まえながら、将来の量子中継のあり方を検討しています。

このような量子中継の研究は、量子暗号通信の実用的な距離拡張を目的としたものであり、量子インターフェースや量子メモリ研究と密接に結びついた基盤技術です。

新たな展開:ダイヤモンド量子センサ

ダイヤモンドNV中心は、磁場や電場、歪みなどを高感度に計測できる量子センサとしても注目されています。
量子センサの性能は、量子状態をどれだけ壊さずに保てるか、どれだけ選択的に感度を持たせられるか、そしてどれだけ高精度に読み出せるかに大きく依存します。

小坂研究室では、量子メモリや量子操作の研究で培われる 量子状態を扱う技術 を活かし、量子計算・量子通信と地続きの形で量子センシングへも展開しています。

※研究内容のより詳しい概要は、こちらよりご覧ください。

勉強会

『NQCセミナー』の資料

TOP